対談!vol.01「アルドーレ代表 木村友彦 meets 放送作家 橋本昌人」
■ プロフィール
放送作家/橋本昌人 橋本昌人
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放送作家(社団法人 日本放送作家協会会員)。
ラジオ、テレビ番組の構成を始め、雑誌やWEBサイト等に多岐に渡るお笑い関係の文章を書く「お笑いライター」としても活躍中。

【著書】
『よしもと一笑懸命』(毎日新聞社・刊)※「毎日新聞(月曜・朝刊)」、及び「毎日中学生新聞」の連載から抜粋した、様々な吉本お笑い芸人の、泣けて笑える人生ライブ・ドキュメント。
■ 対談一覧
【vol.4】" NPO法人BS経営研究所 代表理事" 木村勝男
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【vol.3】" 株式会社 J-DREAM 代表取締役" 木山修助
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【vol.2】" 大正浪漫の足湯屋さん" 代表 野口隆雄
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【vol.1】放送作家 橋本昌人

「思い切ったこと言うてはるわぁ」

橋本: 色んな職種の人を招いてのトークの模様を、これからホームページ上で公開されるんですね。
木村: 橋本さん、記念すべき一人目です。
橋本: プレッシャーかけんといて下さい!えー、では色々と聞きたいことがありましてね…。
木村: いや、僕の方が色々とインタビューしていくというスタイルにしたいんですけどね。
橋本: え、僕に!?聞いてませんけど?(周りに救いを求めるような視線を)
でもほら、一回目なんで、そこは木村さんにたくさん話していただく回にしたいと思うんです!
木村: まぁ、とりあえず質問させて下さい。放送作家さんと構成作家さんとは、どういう違いがあるんですか?
橋本: 橋本語る!それはですね、分かりやすく言うと…同じようなもんです(笑)。
多少、構成作家の方が番組制作寄りというか、企画を考えつつ台本も書くというイメージですかね。放送作家が台本や文章、企画を発表する媒体はテレビやラジオに限らず、CMだったりホームページや携帯電話のコンテンツであったり、ある時はキャッチコピーも含めた商品企画だったりする、というのが僕なりの定義です。だから、木村さんの吹田の店の一つ『CLUB ARDORE』のキャッチコピー「セレブな女性が集まるお店」というのにも目が行ってね、思い切ったこと言うてはるわぁと思うんです(笑)。
木村: いや、あれもね、そっちに走りすぎてもアカンかな、なんて、思いながらやってるんですよ(笑)。パチンコ屋の原点も忘れたらアカンなと。
キャッチコピーや店のコンセプトについては、自分らなりにやってきて、それに膨大な時間も費やしてきました。なんといっても、大切ですからね。でも、そっちばっかりに力を入れすぎて現場をないがしろにしてしまってもアカン。策に溺れて、お客さんの顔をちゃんと見てなくなったらダメですよね。
橋本: じゃあ、もう外注で僕にやらせて下さい(笑)。
でも、机上論にばっかり走ったらまずいと、肝に銘じてはるということですよね。
木村: 木村語る!はい。でも、それを分かった上で、ソフトの部分もハードに負けないくらいの差を「自分らで提供していかなアカン」ということで、みんな、よぉがんばってやってくれてます。
ポスターの作り方一つにしても。別の店が「そんなこと、どーでもええわい」と思うことでも、それ、うちの会社のこだわりです。BGMひとつとっても「この店でこれじゃないでしょう」とかの意見を、店長や主任だけじゃなく、アルバイトから言えるようにせぇと、常に言うてるんです。 だからバイトの子が「この箱の置き方は、店長、この店の雰囲気とちゃいますやん」って、言うてくる。そないなったら、こっちのもん。
橋本: アルバイトの方の意見も聞いて決めてはるとは思いませんでしたわ。
木村: 色んな考え方があるんで、しっかりと店のコンセプトがないとバラバラのこと言うんですよ。「その考え方は分かるけど…」の繰り返しですわ。収集がつかない。でも、しっかりとしたコンセプトが根っこの部分にあって、みんなに浸透していれば、だいたい同じ方向に意見が集まるんで、その意見が重なり合って「これは違う」というところを改善してくれますよ。


「冷静なテングならいいんでしょうけどねぇ」

橋本: 木村さんは二代目ですか?
木村: ええ、ボンボンですわ(笑)。
橋本: でも、絶えず色んなことを考えて、で、その考えに安住しないという、いわゆる“テング”になりにくいタイプですよね。
木村: なりますなります、なりやすいから常に客観的に見てるんですよ。
橋本:




木村:
橋本鋭く切る!僕、仕事がらね、テングになって人気をなくしていった芸人さんとか芸能人を見たり聞いたりする機会が今まであったんですけど、ぜんぜん違うタイプですけどねぇ。 今までに「テングになって、やってしもたぁ」みたいな失敗、ありました?

5年ほど前に、入社して初めて会社の危機を体験しました。僕の経営判断のミスです。 まだ業界全体の業績もいい頃やったんですけど、入社して売上記録を連発。何もかもがうまくいって、テングになって甘く見て、経営判断を間違えたんですよ。正直、ボロボロになってね、血の吐くような思いの末に、ようやくのV字回復。苦しい時期を一緒に乗り越えたうちの幹部は、真剣になるとみんな泣きます。僕も泣きます(笑)。 それがキッカケで、社員との絆を感じることができるようになった。
橋本: それまでは、いわゆる「俺のお蔭や」ですか?
木村: はい。いつも、業績がいいのは、最終的には「俺の力や」と思ってましたねぇ。けど、その時に生まれて初めて、業績がいいのは「こいつらのお陰や」と本気で思いました。バイトに関しても、その時、初めてムチャクチャ感謝しました。それまではなかった。「こいつらががんばってるのは、俺ががんばってるからや」くらいしか。 今は、部下の前で泣くのは恥ずかしいとは思いません。真剣になればなるほど 涙はこみ上げてくるものです。歳で、涙腺ゆるんだだけなんかな(笑)。
橋本: しかし、修羅場をくぐってはるんですねぇ、普通のボンボンかと思ってたら!
木村: 基本、ボンボンですけどね(笑)。 でも、僕の10年間の経営者生活の中で、成功体験なんて全く自分のためになってない。肥やしは失敗体験だけ。成功体験ほど邪魔なものはない。 失敗は成功のはじまりというよりも、僕にとっては、成功は失敗のはじまりですわ。 テングも、冷静なテングならいいんでしょうけどねぇ(笑)
橋本: なんか、怖いテングやなぁ〜。
木村: 木村深く語る!今、また感謝を忘れているのを感じる。「今、俺、人のせいにしたな」ということが多いと、ストレスたまってるんですよね、自分も会社全体も。即、業績に反映する。 「なんで俺はこれだけやってんのに、おまえは分かってくれへんねん」ってね。それが、本気で「自分のせいや」って思えた時に、次の方法が見えてると思います。それまで、けっこう時間がかかりますね。 人のせいにしてる時ってストレスがたまるって言いましたけど、その理由は、変えようがないからなんですね。警察行政のあり方、メーカーのあり方、社員に対して、親に対して、誰に対しても、力ずくで変えられるわけがない。 最後に「自分が変わればええんや」と思うと、すごく楽なんですよ。そして、たぶん、周りも楽だと。
橋本: その自己分析も、一時テングになって痛い目にあったから実を結んだ考え方ですよね。堅実という、文字通り、堅い実ですわ。
木村: 経営は堅実に、営業はイケイケに!(笑)これは、パチンコ業界では絶対に守らないといけない合言葉やと思う。


「それ、ウソやろ!」

橋本:




木村:
橋本さらに深く切り込む!あのですね、さっき、会社案内とか見せてもらってたら、なんと、こちらって会社の階級によっての給料の細かい額を、全部明らかにしてるんですね! 普通は「ナンボからナンボ」のように、ぼやかしてません?

昇給の制度も、独立支援制度も、ハッキリさせている。まさに、ガラス張り。うちの会社は、誰がどれだけもらってるか、たとえそれが管理職であろうと、全員知ってる。社内でももちろん、社外に対しても完全にオープンにしたいんです。隠す必要性を感じない。
橋本: オープンにするのは初任給くらいですよね、だいたい。
木村: 会社を選ぶ時、給料面は大きいんで、始めから開示してね。その上でうちの店を見てもらって、面接に来てもらうのが一番ありがたい。
橋本: 業界平均より給料ベースが高いから、見せびらかしたいとか?
木村: 高くないです(笑)。
橋本: でもまぁ、確かに安心ですよね、これだけハッキリしてると。
木村: 実際に、面接に来た人に「なぜ、うちを」と問うと、その明瞭性に安心感を感じたという人がほとんどなんでね。
橋本: 木村さんは、面接に来た人のどんな部分を見るんですか?
木村: 二人で盛りあがる!面接の時に必ず言う。「うちの会社では一生面倒は見れません。うちで60まで働いて、退職金もらってなんて、とてもじゃないが責任取れないです。うちの欲しい人材というのは、この会社をステップにして、ここであるレベルまでいって、よし、次チャレンジしたい・・と言う人だけほしい」と。自分の夢を実現するために、うちの会社で働くことに意義を見つけられる人かどうかを見ますね。「もしキミが今の話の中で、俺の言葉に共感してくれるのやったら、俺を試してみてくれ」と。よっしゃ、ここを踏み台にしたる!と思えた人だけ、来てほしい。
橋本: 魂に響かなかった人は、ビックリして小走りぎみに帰りそうですね。
木村: でもね、最後は自分の夢に羽ばたいてほしいんですよ。もちろん、うちの会社で専務、常務、また社長になって、この会社をもっと大きくしてやるんだというのも、それはそれでいい。でも、そういう人たちばっかり採ってると、僕はウソをつくことになるんで、それは絶対イヤなんですよ。
橋本: 常務、専務だらけになったら、すぐ潰れますもんね(笑)。
木村: だから、給料システムを明確にして、査定のシステムも明らかにするし、うちはパチンコ屋というお題の中で、細かいコンセプトも打ち出してアイデアも出し合って、磨き合っていきましょうと。そういうようなやり方をしてる。
橋本: お題に真剣に取り組んだら、大喜利でも、いいボケが完成しますから。
木村: 木村心の本音を語る!(笑)最後は、社長を作りたいんです。それが、ひょっとしたら、うちの会社と協力関係にある取引先になっても楽しいんですよ。
うちも、外部ブレーンをたくさん使ってるんで、パチンコ屋で働く中で、例えば…そう、清掃屋さんって毎晩入るんですけれど、現場で働きつつその人たちを見て「ああ、こういうふうにやってんのか、なるほどなぁ。でも、俺やったら、こうやるなぁ」とか「俺は、パチンコ屋で働いたのを生かして、パチンコ台のメンテナンスもできる清掃屋になりたいな」とか。
思い立ったら、事業計画書を作りなさいと。作り方が分からないんやったら、部長に聞いたらフォーマットと共に教えてくれるよと、ね。
橋本: パチンコ屋さんで、店内アナウンスのマイクパフォーマンスを学んで、将来、芸人になる夢に活かしたい!なんていうのも、真剣やったらアリでしょうか?
木村: それは考えたことなかったですわ!(笑)
橋本: なんか、社員さんに行った『5年後の夢はなんですか?』というアンケートで、ここの会社にいると書く若い人は、ほとんどいなかったそうですね。
木村: そうなんです。つまり、会社にブラ下がるな!という言い方を僕はいつもしてるんですけど、会社にブラ下がるのは俺一人でもう充分やと。ブラ下がらずに上をいけ、踏み台にしろ、と言ったほうがみんながんばるんですよ。
橋本: でも、企業によったら、面接の時にウソでも「ここに自分を捧げます」のようなセリフに好印象を感じるところもあるんでしょうね
木村: 面接の段階で「ここに骨を埋ずめさせてもらいます」という人はいらない。 「それ、ウソやろ!」って言います(笑)。


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