2013/05/18
最後の100円
ある中小企業の経営者Mさんのお話をじっくり聴く機会に恵まれました。 その方は私と同い年、10代の頃からあらゆる職業を経験、そして31歳の時に空調設備・配送業を起業され、最盛期には60名以上の従業員を抱える会社を経営、月商1億円を叩き出したことも何度もありました。しかし昨年春、創業12年続いた会社を廃業することになりました。 廃業を決断するまでの最後の2〜3年は毎日が逆境と苦難の連続だったようです。会社の運転資金はもちろん、個人資金も全て会社再建のために注入し、奥さんのタンス預金どころか最後は子供さんの預貯金まで社員さんの給料の支払いに充てたそうです。Mさんはこの時代を振り返り、「最後の100円が無くなるまで転げまわり、そしてもがき続けた。」と仰っていました。 そして資金繰りよりも辛かったことは社員さんが会社を去っていくことだったと回想されていました。社員さんが退職する度に自問自答しながら七転八倒〜悶絶の繰り返しだったそうです。 そんなMさんですが、今は奥さんと一緒に飲食店を家族経営されています。最愛の娘さんもお店のマスコットとして家族3人新しい夢に向かって力強く第一歩を踏み出しました。Mさんは「以前の会社では『お金』は儲けれなかったけど、自らの『体験』は儲かった。あの苦しみはお金を出しても体験できないよ」と言い放ち、現在のビジョンは「まずは家族を守り、家族と幸せを共有すること。そしてもし神様が贅沢を言わせてくれるなら、もう一度数人だけで良いから共に苦楽を味わえる社員さんと仕事をし、その社員さんを家族だと思い人財育成をしていきたい」と仰っていました。 Mさんのお話を聴かせて頂き、同じ経営者としてその想いは頭では重々理解できます。しかし本当の真意はその体験を己もしない限り、永遠に腹から理解することはできないでしょう。しかし先人から学ぶことによって少しでも「今」に変化を起こせるとするならば、選り好みせずに良いと思う学びへは率先垂範してチャレンジし、部下の人財育成に努めることが経営者の永遠の使命です。 Mさんの新しい夢を陰ながら応援したいと思います。 |
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